五行の象徴についての考え方

陰陽五行を勉強し始めて、最初にぶち当たるのが「象徴」の扱い方です。

陰陽五行の理屈(相生・相剋関係)はわかっても、どうやって世の中に応用するのかさっぱりわからない。それで面白くなくなってしまう、陰陽五行の勉強あるあるです。

陰陽五行は象徴を扱う哲学体系なので、象徴の捉え方を間違ってさえいなければ、実は「間違い」は存在しません。なぜそうなのかを、論理的に説明することができれば、それはそれで「正解」になるのです。「あー、なるほど、そう考えたんだ」って言えてしまうのです。

もちろん、伝統的な配当は「事実」として覚える必要があります。むしろ、伝統的な配当から共通するイメージを膨らませていくのが大切です。

今回は、五行の象徴についての考え方をまとめていきます。

象徴は「中心の意味からの連想ゲーム」

私たちが住むこの世界は、あくまでも五感で感知して認識している世界です。そのため、それ以外の世界(五感で感知できない、目に見えない世界)に対しては、自分の理解力をもって対処するしかありません。その理解力のためのツールが古代から伝わる「象徴学」です。そして、象徴学の代表が「陰陽五行」なのです。

「象徴学」と言っても、難しく考えず「まじかるばなな」などの”連想ゲーム”と同じだと思ってください。あるひとつのテーマを決めて、そこに属するものを考えていくゲームです。

ただし、「陰陽五行」で扱うテーマ(要素)は5つ。世の中のすべてのものは5つの要素にわけ、説明することができるのです。また、形のないもの(「きれい」「落ち込む」「尊敬」など)も分類されたり、時間と場所によっては変化してしまったり、ということがあり最初は「つかみどころがない」かもしれませんが、いろいろなものに応用していくなかでだんだんとわかってきます。

ここから、5つの要素について象徴の意味を確認し、「陰陽五行」の発想のもととなる考え方をみていきます。

「水(すい)」の意味

東洋の哲学では、すべてはまず水から始まるとされています。すべての根源的な力は水にあって、そこから活動が始まるのです。生命は水なしで生きていくことができません。

究極の冷たさを表す「水」は、季節では「冬」になります。冬は寒い、なので「北」も「水」です。

寒がっている人のイラスト(男性)

時間では「真夜中」(23時~1時頃)です。夜は太陽が姿を消しているので、「月」が「水」です。夜は、真っ暗なので色は「黒」です。また夜は寝る時間なので「睡眠」や「冬眠」も「水」です。

水には表面張力があります。水分子同士がくっついて、小さく丸く収まる現象です。そのため、吸引力や内向的な力、引き付ける力そのものを「水」とします。職業でいえば「仲人(結婚前のふたりを引きつける)」、「セールスマン(お客を引きつける)」、「接客業」は「水」になります。内向的から発想すれば「個性」も「水」です。他にも水に関連するもの、「漁業」「水道局」「水商売」「飲料」「インク」は「水」です。

味については「塩辛味」です。「水」は水、つまり海に関連があるからです。

「木(もく)」の意味

季節は冬から「春」になっていきます。春は生命が目覚める季節です。すべての生き物が活動を始める「春」は「木」であり、「木」はその「生き物(有機生命体)」の象徴でもあります。春には、今まで地面で冬眠していた動物が目覚め、地面は熱気を受けてモヤモヤとかげろうがあがります。このかげろうのように熱気があがる様子も「木」です。「木」は伸び上がろうとするエネルギーであり、熱気を表します。

生まれてから青年までを「木」で象徴します。青年は若く青い時期です。そのため、色は「青」を「木」とします。「青春」とはまさに「木」のことです。時間でいえば、一番若いのは「朝」(4時~8時頃)です。そのとき、おひさまが登ってくる「東」も「木」です。

若いことは学びの「入り口」ということです。「入る」や「往来」も「木」のイメージです。「他人の心に入る」といえば、「話し合い」「おしゃべり」は「木」です。また「自由自在に入り込む」とすれば、「やくにたつこと」すなわち「技術」となるので、「エンジニア」や「工芸の職人」も「木」になります。

若い青年は、静寂よりも喧騒を好み、活動的で、時には爆発してしまうこともあります。この荒々しさが「木」であり、自然では「雷」「風」がそうです。「雷」と本質が同じなので、「電気」も「木」です。雷や風には騒音が伴います。だから、「音楽」「放送」も「木」になります。ただし、この騒音は長続きせず、瞬発的で空虚なものです。そこから、「拡大」「誇張」「嘘」「ヒステリー」も「木」になります。

ノリノリで音楽を聴く人のイラスト(女性)

風から連想していくと、長く連なるもの、ヒモのように長いもの、「蔦のような植物」「花屋」「八百屋」も「木」になります。「うどん」などの麺類も「木」です。風をにおいと捉えれば、においの強い「にんにく」や「ニラ」も「木」となります。

味については「酸味」です。まだ熟していない「あおい」実はすっぱいです。だから若いということは「すっぱい味」になります。

「火(か)」の意味

春が過ぎれば「夏」がきます。最も暑いを象徴する「火」は「夏」を表します。方位は「南」です。時間では、「真昼間」(11時~13時頃)です。火なので、色は「赤」です。

火は一番熱いのが外炎で、内炎はほとんど熱くありません。つまり、外側は華やかでも、内側が空虚である「むなしい」というイメージも「火」になります。易では「火」のことを「離(り)」といいます。「むなしい」イメージとあわせて考えると、「くっつくが離れるもの」と解釈できます。そうすると、「天ぷら」は衣が剥がれるので「火」になります。「化粧」「アクセサリー」も「火」です。紙を飾っていると考えれば「文章」「証明書」なども「火」になります。

ろうそくのイラスト

火は照らし出して「明らか」にします。「罪をあばく」から考えれば、「検事」「裁判官」は「火」になります。「華やか」から考えれば、「繁華街」「パーティ会場」も「火」です。

味については「苦味」です。ほとんどの食品は、火を通していくと「苦く」なります。

「金(ごん、きん)」の意味

五行のなかも「金」は、特にややこしく、わかりにくい概念です。

季節は夏から「秋」になります。「秋」は「天高く…」の季節です。秋は乾燥した窒素性の大気で酸素が少ないため、空が高く見えるのです。すなわち、酸素と窒素を「分けて」しまう季節であるということです。この「分ける」ということが「金」の重要なテーマになります。

「金」は単なるカネだけではなく、「聖なるもの」「天」というイメージがついてきます。「白くて純粋」「健全にして充実」なものは「聖なるもの」で、「金」になります。一方で、「人間的などろどろ」や「カネ」「酒」「賭博」などの「俗」の世界も「金」になります。このように「聖」と「俗」が混在するのが「金」であり、このあたりがつかみにくい理由でもあります。

さて、「分ける」ということから連想すれば、分けたら、残りは捨てなければなりません。中途半端は許されないのです。分けるということは、きれいにマッサラにするということ。そのため、色は「白」が「金」になります。

秋には植物が実を作ります。これは次世代への情報を種のなかに、「収斂(しゅうれん)」していくためです。そして、できた果物はやがてポトンと落とされます。まさに「分けられ」ています。

秋の味覚のイラスト(ぴょこ)

時間でいえば「夕暮れ」(17時~19時頃)です。そのとき、日が暮れていくのは「西」の方角です。だから、これらが「金」になります。

職業でいえば、「聖」から連想して、充実して、監督しているというイメージから「社長」「政治家(?)」「資本家」「医者」などが「金」になります。対して「俗」から連想すれば、「刑務所」「バー」「パチンコ屋」などが「金」になります。いずれにしても聖俗はひっくり返ってしまうことがあるというのは、想像しやすいかと思います。

味については「辛味」です。カレーを食べると毛穴が開いて汗をかきます。汗は体内の水分を「分けて」、外に出していくのです。

「土(ど)」の意味

さらっと「土」を最後に持ってきました。「土」は全体を象徴し、季節の中心を表します。

季節の中心とは、「十文字五行」でご紹介したように「土用」のことです。

「土」は全体なので、その影響は常にあるのですが、ある季節のときはそれぞれの影響に隠されて目立たなくなっています。そのため、季節の間には「土」の影響が強く出てくる(ように見える)ということです。「土」は全体であり、中心というのが大切です。

中心であるから、可視光線のスペクトルで真ん中にくる「黄」が「土」の色です。方位についても、季節の考え方と同じで、間(北東とか南西)は「土」になります。

土は畑にあれば植物を育てますが、そのままにしておくとやがて腐っていきます。そのため、「土」の作用は「育てるが、腐らせる」と表現されます。いつまでも世話になっていると独立できなくなってしまうという意味で、「親」は「土」です(狭義では「母親」です)。

育てるが腐らせる作用は、言い換えれば「平らかにする」ということです。まさに、土に返すようにです。この「平ら」から、「社会的常識」というのも「土」になります。「柔順」「中和」「勤勉」「謙譲」「育成」「丁寧」も「土」です。昔の「日本の母」のイメージ像です。職業では、「女房役の仕事」すなわち「次官」「副社長」が「土」になります。

苗を植える男の子のイラスト

「平らか」からもう少し考えると、「平凡な」「疑い深い」「へりくだる」「冒険しない」などが連想されます。そのため、「労働者」「大衆」「烏合の衆」「ペット」も「土」です。「へりくだる」から「カーペット」「畳」も「土」になります。「烏合の衆」を「糸の集合」と解釈すれば、「布製品」「風呂敷」「カバン」も「土」となります。

平らかにすれば、土は積もって山になります。そのため、「山」とも関連し「山林業」、動かない「不動産業」「ホテル」「駐車場」も「土」です。また、硬いものを扱う職業「石屋」「歯科医」も象徴されます。硬いくちばしや角を持つ動物も「土」で、牛やゾウ、ツル、サギが入ります。

味については「甘味」が「土」です。「甘いもの」を食べると、休息します。つまり「動かない」で「緩んで」いきます。「土」は、育てるが腐らせるといいました。甘いものは、食べ過ぎると太ってしまうのです。

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